2009年10月07日

首都圏外郭放水路調圧槽見学〜地下神殿へ突入

今日は【首都圏外郭放水路】の見学会に行ってきました。
予約して1ヶ月待ってようやく…の見学です。

埼玉県南東部、春日部市のあたり。
江戸川と綾瀬川に挟まれた地域は土地が低く、たびたび水害に悩まされてきました。
首都圏外郭放水路は、この地域をながれる中川・倉松川・幸松川・大落古利根川が増水した場合にその水を地下に取り込んで江戸川に流すことで浸水被害を防ぐという、世界最大級の設備です。
各河川の水を取り込む【立坑】と、水を送る【トンネル】、そして溜まった水を江戸川に排出するための【調圧水槽】【排水機場】【排水樋管】で構成されています。

【立坑】は全部で5箇所。
大きなものは内径が30m、深さが70mもあります。

【トンネル】は地下50mに設置。大落古利根川ちかくの【第5立坑】から江戸川近くの【排水機場】まで、総延長6.3kmにも及びます。

そして今回見学したのが排水関係の施設、【庄和排水機場】内の資料展示室【龍Q館】と地下の【調圧水槽】です。

〜〜

9:15、東武野田線【南桜井】駅に到着。
駅前にタクシーの1台さえも停まっていないので、駅から3km離れた排水機場まで雨の中を徒歩orz

30分ほど歩いて、周囲がだんだん寂しくなってきた頃…

庄和排水機場遠景

見えてきました。
見学会は10時から。なんとか間に合いました…。

〜〜

見学会は、展示室内での写真やビデオ、模型を用いた施設説明から始まりました。

展示室

今日見学する【調圧水槽】は、トンネルを通じて流れてきた水の勢いをやわらげ、流れをスムーズにするための設備。
ここに溜まった水をポンプで江戸川に排水するのが【排水機場】。ポンプの動力にはジェット機のエンジンを改造したガスタービンが使われており、その能力は合計で毎秒200立方メートル…つまり小学校の25mプールが1秒で空になるほど。
放水路が完成した後、この地域の浸水被害は激減した…

などなど。

とにかくすごい設備のようです。

〜〜

続いて、調圧水槽見学のための諸注意を受けて、いよいよ見学に出発。

いったん建物を出て、【多目的広場】…調圧水槽の真上…を横切り、

地下への入口

ここから地下へ。
階段はコンクリート向きだし。古いビルの階段のような感じです。
まぁ100段くらい、僕の足にはまったく大したことはありません。

…さすがに山寺で1000段登ったときは辛かったですが…。

そして最下部到達。

そこは…

調圧槽3

長さ177m、幅78m、高さ18mの巨大な空間。
59本のコンクリートの柱が立ち並び、天井を支えています。

規則的に柱の並んだその姿から、地下のパルテノン神殿とも呼ばれているそうです。

調圧槽4

今降りてきた階段の方を振り返るとこんな感じ。
写りこんでいる人物の大きさから、施設全体の巨大さがわかるでしょう。

天井にすき間が空いているのが判るでしょうか?
ここは地表への開口部。鉄製のふたを外せばかなり大きな穴があきます。
排水後、調圧水槽内に溜まった土砂をとりのぞくのに、ここからブルドーザーなどを搬入して作業することもできるそうです。

気密・水密ではなく単なる『ふた』なので、今日のような雨天ではここから雨が漏るため、下に水たまりができています。

調圧槽2

この独特のスケール感のある光景から、調圧水槽内はTVや映画のロケーションにもよく使われ、最近では『仮面ライダー・ディケイド』にも登場したそうです。

立坑1

こちらは調圧水槽に隣接する【第1立坑】。
第2〜第5立坑と違い、第1立坑だけは河川と直接繋がっていません。トンネルで他の立坑と結ばれ、流入してきた水を調圧水槽に導くようになっています。
この立坑はスペースシャトルがすっぽりとおさまるほどの大きさ。左手に写っている階段からも大きさが判ると思いますが、この写真で見えているのは上部1/3だけです。立坑の底は、調圧水槽の床面の高さからさらに数十mも下です。


もうなんというか…

人間はスゴイ物を作るんだな

という感じでした…。

〜〜

地上へ戻って、見学会は解散。
あとは自由に展示室などを見て回ります。

地底体感ホール

【地底体感ホール】

首都圏外郭放水路の建築風景や稼働の様子を、実写映像とCG動画で解説。
ホール自体は立坑を模した円筒形。
壁には地下をイメージした『汚れ』の塗装があるなど、不思議なセンス。

設備模型

【放水路設備模型】

左手から第3〜第1立坑、調圧水槽、排水機場。
本物の水を流して設備の動作を説明しています。

ポンプ模型

【ポンプ設備模型】

残念ながら本物のポンプ室には入れないので、この模型を見て動作を想像。模型の右手にガスタービン、左下にポンプ本体があります。

操作室

【操作室】

これは実際に設備全体の状況を監視・操作するための部屋ですが、展示室からガラス窓越しに中を見学することができます。
天井付近にずらりと並んだ20台ものモニター、正面の大型ディスプレイ、コンピュータの操作卓などがあります。

ここもTVや映画の撮影にたびたび利用されているそうです。
たとえば【ウルトラマンコスモス】の秘密基地・司令室は実はこの操作室だったとか…。

#ガラス越しなのでうっすらとカメラが写りこんでしまいました…

〜〜

展示室を出て階段を下りようとすると、

地層

そこにはこのような地層標本が。
これは調圧水槽の建設工事の際に採取されたサンプル。
関東地方でこれほど深くまで地面を掘った例は珍しく、学術的にも貴重なもの。貝の化石の層があったことから、25万年前はこの付近は海底であったことが判ったそうです。

M2階展示

中2階の展示コーナー。
小さなスペースで、素通りしてしまう人も多かったのですが…。

貝の化石

先ほど触れた貝の化石。
現在は絶滅した種のもの。

シールドマシン模型

トンネルを掘るのに使われたシールドマシンの模型。

シールドマシン・カッター

シールドマシンの刃。
『新品』と『使用済み』両方を比べてみることができます。

〜〜

1階は【市民ギャラリー】として、絵画や写真などの展示にレンタルされるスペースになっています。

〜〜

続いて外へ。

ふたたび多目的広場を通って地下への入口の近くまで行ってみます。

調圧水槽開口部

これが多分、調圧水槽の開口部。

地上施設全景.jpg

この写真の右寄り、地面に丸く色が変わっている部分がありますが、そのあたりが第1立坑の真上だと思います。

今度は排水機場建物を挟んで多目的広場の反対側、江戸川に近い方へ行きます。

時計

シールドマシンの面板(トンネルを掘るための回転部)を利用した直径12mの大時計。

排水樋管

そしてこれが、江戸川へと排水する排水樋管の出口。

〜〜

というわけで非常に充実した見学となりました。

〜〜

【首都圏外郭放水路インフォメーション】
http://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/project/g-cans/index.html

【龍Q館】
http://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/project/g-cans/ryuukyuu/index.html
埼玉県春日部市上金崎720
開館時間:9:30〜16:30
休館日:月曜日/年末年始
入館無料
※龍Q館展示室の見学は予約不要です

【地下調圧水槽見学会】
http://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/project/g-cans/kengaku/index.html
毎週火〜金曜、10:00〜11:30/13:00〜14:30/15:00〜16:30

要予約

・1ヶ月前から予約受付開始ですが、すぐに満員になる状況です。
例えばこの記事の執筆時点(10/7)では、11/5まではすべての回が満員になっており、予約可能なのは11/6の13:00〜のみになっています。

・予約をしても見学できない場合があります。例えばこの記事の執筆時点では、台風の接近により10/8の見学会中止のアナウンスが出ています。台風が関東地方を直撃した場合、おそらくその後数日は見学不可能になるでしょう。

・見学中止になった場合、振替などは一切してもらえません。予約からやり直しです。

・階段100段を自力で上り下りできる体力がない人は見学できません。

・解説や注意は日本語のみで行われるため、グループに最低1人は日本語のわかる人が必要です。

・未就学児童は入場できません。小中学生は保護者の同伴が必要です。

…と、いろいろ条件が厳しいですが、
調圧水槽はあくまで防災のための設備であって博物館の一部ではなく、ましてテーマパークなどではないということを理解した上で、見学を申し込みましょう。

posted by MAX CARTER at 16:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 博物館
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
・サイズの大きな写真は複数の写真を並べて合成したものなので、接続部で色合いが違う・わずかなズレが生じている・全体的に湾曲していることがあります。
・このブログは個人が旅行・見学の感想を書いているものであり、記事中に登場する各施設の公式なコンテンツではないことはもちろん、記事中に明記されていない限り各施設を運営する団体・職員とも一切関係ありません。
・価格、所要時間、展示内容その他記事中で紹介されている事項は変更されている場合もあります。必ず各施設の公式サイト等でご確認の上、お出かけください。
・本ブログ記事の情報を利用したことにより直接的あるいは間接的な損害が発生したとしても、当ブログ著者・サイト管理者は一切責任を負いません。